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※ 【0歳からの赤ちゃん教育1】 一日も早く首がすわるようにするには?
<第1期・反射期――誕生から1ヵ月半くらいまで>
http://diamond.jp/articles/-/74195【記事引用】
ベストセラーとなり、名著『幼稚園では遅すぎる』著者でソニー創業者の井深大氏も絶賛した、久保田競+久保田カヨ子著『赤ちゃん教育』(1983年刊、その後絶版)。
あまりに貸出が多く本がボロボロになり、国会図書館からも消えた。アマゾンマーケットプレイスでは、10,056円のプレミア価格がついた。そんな“0歳からの伝説の育児バイブル”が、最新の脳科学データをアップデート&190点近いイラストも一新して完全リニューアル!
Amazon.co.jpでは、総合100位以内に13日間入るベストセラーとなっている。脳科学の世界的権威である久保田競氏と『中居正広の金曜日のスマたちへ<金スマ>』(TBSテレビ系)で“脳科学おばあちゃん”と紹介された久保田カヨ子氏だが、クボタメソッドの原点はすべて『赤ちゃん教育』にある。そんなクボタメソッドの奥義を「0歳からの赤ちゃん教育」を5回に分けて語ってもらった。
今回は、第1期【反射期】、誕生から1ヵ月半までくらいだ。
なぜ、「5つの時期」にわけるのか?
私たちは、生まれてからの赤ちゃんの身体と脳の働きの発達を5段階にわけています。
【第1期反射期】……誕生から1ヵ月半くらい
【第2期首すわり期】……1ヵ月半から3ヵ月半ごろまで
【第3期腰すわり期】……3ヵ月半から5ヵ月半ごろまで
【第4期つかまり立ち期】……5ヵ月半から8ヵ月ごろまで
【第5期二足歩行期】……歩きはじめるころ以降
もちろん、赤ちゃんの成長発達は、けっしてきれいに段階にわけられるようなものでなく、連続的なものですが、わかりやすくするために、節目ごとにわけたものです。5段階にわけるのが、私たちは適当と考えています。
第1段階は、刺激だけに応じる「反射期」で、心と呼べるものもない、“こわれやすい機械”とでもいえる時期です。赤ちゃんに刺激を与えると、生まれつきそなわっている「反射」で応じます。
生まれてから1ヵ月半くらいまでがこの時期です。刺激には身体の外から与えるものもありますが、身体の内で発生するものもあります。
第2段階は、刺激と反射とを組みあわせ、刺激に対して反応することを覚える「刺激反応期」です。生後1ヵ月半から3ヵ月半ごろまでがこの時期です。刺激で起こる反射に、赤ちゃんのほうから働きかける反応がつけ加わったもので、刺激に対する反応が「反射」より複雑になっていきます。
そして、生まれたときの反射は、だんだんと弱くなり、赤ちゃんは反射から解放されていきます。
この時期は、「首すわり期」ともいわれるように、ある程度、首がすわってきます。昼夜のリズムもある程度はっきりしてきます。いわゆる「生物時計」がきちんと体内で時刻をきざむようになり、外界への好奇心もでき、「心」といえるものが発生する時期です。
第3段階は、「腰がすわってくる時期(=腰すわり期)」で、外界に向かって働きかける自分を発見する「探索期」です。生後3ヵ月半から5ヵ月半ごろまでの時期です。
第4段階は、「つかまり立ちをする時期(=つかまり立ち期)」で人見知りをするようになり、自我がはっきりしてくる「自我発生期」です。生後5ヵ月半から8ヵ月ごろまでの時期です。
第5段階は、「2足で歩きまわれる時期(=二足歩行期)」で、自分で新しい行動手段を見つけることができるようになる時期で、問題解決を自分でする知能といえるものが芽ばえる「知能発達期」です。
これらの5つの時期をひっくるめて、「感覚運動的知能の時期」と、ピアジェという発達心理学者が呼んでいます。
一日も早く首がすわるためには?
生まれたばかりの赤ちゃんは、よく眠ります。一日のうち18時間も眠っています。1回に目覚めている時間は短くて、授乳時以外は1回に3〜5分ぐらいです。
起きているときの赤ちゃんのできることは、わずかです。泣くか、くちびるにふれるものに吸いつくかぐらいです。外からの刺激に、生まれつきそなわっている反射で応じることしかできないのです。
●吸う反射――くちびるにふれるものに吸いつき、吸いつづける
●把握反射――手をかたくにぎりしめている、指をひらいても、すぐにぎりしめる
●瞬目反射――目に息を吹きつけると、目を閉じる
この第1期(反射期、誕生から1ヵ月半くらいまで)の赤ちゃんが、自分から外の世界に積極的に働きかけることは、ほとんどありません。心とか知能といったものを、はっきり認めることはできません。
この時期の育児の目標は、一日も早く首をすわらせることです。赤ちゃんをうつむけにして、頭をもち上げ、外の世界を見ることができるようにすることです。
乳首を反射的に吸うことから「積極的に探して吸う」ことヘお母さんは、赤ちゃんの生まれつきの反射を、自分でする反応に変えていかねばなりません。首がすわるころになると、この反射が弱くなるか、消えていきます。
生まれたばかりのときには、くちびるになにかがふれたら、必ず吸う反射をしていたのに、しばらくたつと(極端な場合は生後2日目に起こることもあります)、授乳のときでもないのに、口を開けたり閉じたりして、吸う運動をするようになります。
乳首が赤ちゃんのくちびるにふれなくても、吸う反応をするようになります。吸う運動の回数が日を追って多くなるばかりでなく、吸う力も日を追って強くなっていきます。
生まれて3週間もたてば、自分で乳首を探すような動きをしだします。これは、赤ちゃんが吸う反射から、吸う反応を学習したといえます。
こうして、くちびるにふれるものに無条件で吸いついていた反射が起こらなくなり、お腹がすいているときでも、乳首とそうでないものとを区別するようになっていきます。
赤ちゃんは、乳首の形を知って区別するのではなく、乳首の刺激―吸う反射の運動パターンをくり返します。そして乳が出るという組みあわせが強化されて、吸う反応をしますが、乳首以外の刺激で吸っても乳が出ないと、吸う反応が消えて乳を吸わなくなるのです。
こうして吸う運動パターンを乳首以外の刺激にも行ない、また刺激がなくても行ないながら、乳首とそれ以外のものを区別するのです。
外からの刺激が、正しく動機づけられたときに、正しく反応をすることで経験をつみ、外の世界を知っていきます。つまり学習するのです。
毎日の授乳のときに、一日でも早く、吸う反射が吸う反応に変わるよう、吸う力が強くなるよう、吸うための筋肉が協調して働くように、積極的に試みて、少しずつ学習をさせていきます。
このように反射が、反応に変わっていく過程を「反射の同化」と呼びます。前頭前野と運動野が働いて、自分が反応をするようになるのです。
反射を利用して自分で反応をすることをすすめる育児書は、本書以外にはありません。私たちがこれを利用することを考え、実用化しました。
この時期の学習は反射にもとづくものだけで、それ以外の学習は不可能です。たとえば、目に大きい刺激を与え(ものを大きく動かして見せる)、反応させようとしても無意味です。
生後1週間の赤ちゃんの鋭敏な感覚とは?
赤ちゃんは白紙の状態で生まれてきて、反射でしか応じません。しかし、注意深く観察すると、外からの刺激にはっきりした反応とはいえませんが、微妙に応じていることがわかります。
生まれて1週間で見えたものに対し、人間かそうでないかが、ちがっていることがわかるようです。見ている時間や、見ているときのしぐさがちがっているのです。見るものでも、聞くものでも、ものによって反応がちがっています。
赤ちゃんは、イヤなことがあるとしばらく泣きます。たとえば、脳波を記録しようとして、頭にバンドをきつくしめると、数秒間泣きます。その後は眠ってしまいます。
生後1週間で、温度や味やにおいのちがいもわかります。赤ちゃんが首を動かしてさけようとするにおいがあります。甘いものと甘くないものも区別できます。皮膚は、軽くさわられたこと、圧迫されたこともわかります。
音に対して、目を開けたり、呼吸のリズムが変わったりします。好む音とイヤな音があります。大きな音にはイヤがる反応をします。音の出るところがどこかわかるようです。長くつづく音と短い音も区別できます。
赤ちゃんは目の前にある、赤色や黄色のものを見つめることができます。それよりも遠くはぼんやりと見えているようです。光の強さにも反応します。
強い光には目を閉じます。しま模様は生まれてすぐでもわかるようです。生まれたばかりでは、まるいものよりも、タテじまのものを見つめる傾向があります。
しかし、生後3週間もすると、まるいもの、人間の顔の格好をしたものを好んで見るようになります。
このように、赤ちゃんは刺激に徴妙に反応して、脳のなかで神経回路をつくっていきます。
赤ちゃんの反応は、刺激の種類、場所、強さ、期間によって微妙にちがっています。よく観察して、反射をはっきりした反応に同化するうまいやり方を見つけましょう。
具体的なやり方は、『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』の【実践篇】にイラスト満載で掲載されているので、そちらを参考にしてみてくださいね。
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※ 【0歳からの赤ちゃん教育2】首や手足を強くしよう
<第2期・首すわり期――1ヵ月半から3ヵ月半ごろまで>
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/articlea=20150722-00074200-diamond-sci ダイヤモンド・オンライン 7月22日(水)14時0分配信
【記事引用】
当時のベストセラーとなり、名著『幼稚園では遅すぎる』著者でソニー創業者の井深大氏も絶賛した、久保田競+久保田カヨ子著『赤ちゃん教育』(1983年刊、その後絶版)。
あまりに貸出が多く本がボロボロになり、国会図書館からも消えた。アマゾンマーケットプレイスでは10,056円のプレミア価格がついた。そんな“0歳からの伝説の育児バイブル”が、このたび、最新の脳科学データをアップデート、190点近いイラストも一新して完全リニューアル!
Amazon.co.jpの「子育てジャンル」でも、発売以来ベストセラーが続いている。脳科学の世界的権威である久保田競博士と『中居正広の金曜日のスマたちへ<金スマ>』(TBSテレビ系)などで“脳科学おばあちゃん”と紹介された久保田カヨ子氏だが、クボタメソッドの原点はすべて『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』にあるという。
「脳科学の権威」と「脳科学おばあちゃん」に、0歳からの赤ちゃん教育の第2期【首すわり期】の骨子を教えてもらおう。
【詳細画像または表】
● 首や手足を強くするには?
これまで触れたように、私たちは0ヵ月からの「赤ちゃん教育」を次の5つの時期に分けて考えています。
【第1期 反射期】……誕生から1ヵ月半くらい
【第2期 首すわり期】……1ヵ月半から3ヵ月半ごろまで
【第3期 腰すわり期】……3ヵ月半から5ヵ月半ごろまで
【第4期 つかまり立ち期】……5ヵ月半から8ヵ月ごろまで
【第5期 二足歩行期】……歩きはじめるころ以降
今回お話する第2期(生後1ヵ月半〜3ヵ月半ごろまで)は、「首すわり期」です。
生まれつきの反射が、だんだんと少なくなって、自発的に行なう反応パターンが多くなっていく時期です。
生まれたばかりのときのような弱々しさはなく、目覚めているときは上機嫌で、たえずニコニコほほえんでいます。
まわりを見まわし、生活音に反応し、手でものをつかもうとする積極的な探求心が出てくる時期です。
また、たんに刺激に対して反応するだけでなく、複数の刺激に協調した行動パターンで反応できるようになる時期なのです。
この時期には、脳のなかの神経細胞は突起をのばし、ほかの神経細胞とつながり(シナプス)をつくる働きがさかんです。
でも、この時期の赤ちゃんに刺激を与えないで反応させないでおくと、せっかく神経細胞の突起がのびても、そのシナプスが働かないので、神経回路ができていかないのです。
1つの刺激に対して反応することも、複数の刺激に協調した行動パターンで反応することもできるようになりません。
首も力強くコントロールできるようになり、手足が力強く動くようになると、次の第3期に移行します。
第2期が終わりに近づくと(生後3ヵ月半ごろ)、うつぶせにした状態で、首を上に向けて直角に2〜3分あげ、手足に力を入れてバタバタ動かすことができます。足で強くけることもできます。
しかし赤ちゃんは、まだ自分で寝がえりをうつことができません。赤ちゃんにまわりの世界を見せて、外の音を聞かせると、前頭前野が働いて、まわりの世界へ反応するようになります。
まわりの世界とかかわらせる前頭前野を働かせることが、この時期の目標です。
● 授乳の期待反応 ――満足感を与えると、赤ちゃんは「やる気」を起こす
第1期の反射期(誕生〜1ヵ月半ごろまで)の赤ちゃんは、乳頭がくちびるにふれたときに反射的に吸い、お乳が出るとそれを反射的に飲みこみます。
くちびるに乳頭がふれて、その刺激で吸う反射が起こり、その結果、分泌される乳汁が口腔の粘膜にふれて飲みこむ、「嚥下(えんげ)反射」が起こります。
しかし、第2期に入った赤ちゃんの様子はちがってきます。
授乳しようとお母さんが腕に抱くと、いままでやっていた手の遊びはやめ、乳房を待ちうけ、口を開けます。
乳首がくちびるにふれると、吸う反応をはじめます。くちびるに乳頭がふれる前から、それがふれることを予期して吸う運動を開始します。
お母さんが腕に抱くことや、自分の姿勢が変わることで刺激される感覚が手がかりとなって、吸う運動を予期させるのです。
運動はくり返すと上手になり、特定の手がかりで有効に行なわれるようになります。上手になるほど、少ない手がかりで、運動を待つようになります。
たとえば、抱いて授乳するときに必ず「食事の時間ですよ」と同時にいうようにすれば、「食事」という声を聞いただけで、赤ちゃんは待つようになります。こうして前頭前野が働いて、外界の変化と自分の反応の関係を理解していくのです。
赤ちゃんを抱いても授乳しなければ、赤ちゃんは反応をしなくなり、一度覚えた反応を忘れてしまいます。
反応の手がかりは、数が多いほど有効です。
反応を起こし、外の世界との関係を理解させるには、反応したあと必ず満足感(報酬)を与えねばなりません。
そうすると赤ちゃんには、この次に手がかりがあれば反応しようという「やる気」が起こってくるのです。
● 赤ちゃんの好奇心 ――ものを見つめることで、外の世界を理解していく
生まれて1ヵ月もたつと、ひとりでいるときの赤ちゃんは、まわりのものをジッと見つめるようになります。
ときには、1時間も泣かないで、ジッと見ていることがあります。見つめることで赤ちゃんは、外の世界を理解していくのです。
生まれて2ヵ月もすぎて、まわりのものを赤ちゃんなりに理解してしまうと、いままでに見たことのない新しいものにしか興味を示さなくなります。
赤ちゃんの興味は、新しいもの、ものとしての性質(たとえば赤い色)ではなく、そのものと自分が過去に経験したこととの関係なのです。
ですから、同じおもちゃを見せても、興味を示す赤ちゃんと見向きもしない赤ちゃんが出てきます。
赤ちゃんが体験したものと関係づけられない、まったく新しいものへは、赤ちゃんは興味を示さないものですから、新しいものといっても過去の経験と少しは関係があって、少しは新しいところのあるもの(中程度に新しいもの)を見せることが必要です。
● マネる ――積極的にマネさせて世界をひろげる
外の世界を理解するために、赤ちゃんは見つめているだけではありません。
刺激に対して声を出し、目で追い、手でつかみます。
たとえば、赤ちゃんに「ウ、ウ」と声をかけてやります。はじめのうち、赤ちゃんは反応しませんが、何度もくり返して「ウ、ウ」といっていると、やがてそれらしい口の格好をし、「ウ、ウ」にはならない声を出すようになります。
この音に対して、母親はすぐ反応してやらねばなりません。お互いにマネしあうのです。
そうすると、やがて「ウウ、ウウ」とお母さんがいえば、赤ちゃんも「ウウ、ウウ」と正しくいえるようになります。
赤ちゃんは、いままで一度もしたことのないことはマネできませんから、マネをするとき、それまでにできるようになったしぐさで利用できるものをマネさせましょう。
しかも、お互いにマネしあうことで、赤ちゃんは新しい運動パターンを出すことができるようになります。運動学習をするのです。
赤ちゃんがまわりに見えるものを理解していくとき、赤ちゃんの興味をひく新しいものがないと赤ちゃんは退屈します。ぼんやりと見ているだけになり、積極的に反応しなくなります。
こんなときに、脳の発達が遅れます。
たえず「中程度に新しいもの」を見せつけ、興味をもたせつづけなければなりません。
一日に数回、赤ちゃんをうつぶせにするのは、首の筋を強くするだけでなく、赤ちゃんの見える世界を豊かにするのにもたいへんよいことなのです。同じものがちがって見えることを赤ちゃんは理解していきます。
また、赤ちゃんに鏡を見せるのもよろしい。自分の顔が鏡にうつっていても、それが自分であることは、はじめはわかりませんが、鏡にうつったものが同じものでも、ちがって見えることがわかってきます。
● 多種感覚の連合 ――目と耳と同時に使うことを覚える
第1期(反射期)の赤ちゃんは、音を聞いて首を動かすので、聞こえているということがわかります。
しかし、その音が出てくるほうへは注意を向けません。
この第2期(首すわり期)になると、音のしたほうへ首を曲げ、それを目で見ようとします。
こうして耳と目を同時に使うことを覚えます。お母さんが声を出しながら近づいてくるとき、お母さんの姿を見て、声を聞いて、お母さんが近づいてくるのだということをだんだん理解していきます。
外の世界の音を聞き、目で見て、手でさわって、外の世界の知識を増やし、だんだん複雑な世界を知っていきます。
そして、外の世界の「もの」についての知識をだんだんと増やしていくのです。
この時期に、外の世界の知識を増やすのにおもちゃは必要です。
赤ちゃんがさわれるもので、にぎったりふったりしたときに音の出るものがよろしい。このときには、高価なおもちゃはいりません。手と目と耳を同時に使うようにしむけられるおもちゃならいいのです。
第2期の終わりは、首がすわってくるころで、だっこしても椅子にすわっても、ガクンと傾かないことが大切です。こうなれば、赤ちゃんは次の第3期(腰すわり期、3ヵ月半〜5ヵ月半ごろまで)へ移行します。
● 自分の手を見つめる ――心の発生
生後1ヵ月にもなると、赤ちゃんが自分の片方の手を目の前にもってくることがありますが、たまたま手が顔のほうへ動いただけです。
6週間ほどたつと、自分の手に目を向けるようになります。
日ごとにその動作の回数が増え、見ている時間が長くなり、手を見つめるようになります。赤ちゃんは言葉ではいえませんが、その手が自分のものであること、外界のものでないことをだんだんと理解していきます。
手を見つめる行動は、手を使って意識的に行動する基礎になるもので、このときに赤ちゃんの心が発生したと考えられます。
首がすわり、外の世界を見つめるようになると、反射期は終わり、第2期の首すわり期に入ります。
● 見える世界 ――見る方向で、きき手がわかる
生まれたばかりの赤ちゃんはよく目が見えませんが、しばらくたつと見えるようになります。
見えても見える範囲はかぎられていて、目のまわり20〜60センチの範囲(上方、下方、左右、奥行)なのです。
また、大人がものを見るときのように、両方の目で同時に注視することはできません。
赤ちゃんが目覚めているときにものを見るように、刺激を与えることが必要です。生まれて3〜4週間でものを見るようになるので、このころから視覚刺激を与えるようにします。
ものの形を覚えることと、視覚刺激に注意を向けるという積極的態度を覚えてもらうためです。
生まれたばかりの赤ちゃんがあおむけの姿勢で目覚めているとき、たいていの赤ちゃんが右のほうを見ています。
そのような赤ちゃんが大きくなると、たいていは右ききの子どもになります。
赤ちゃんのきき手を発見するには、赤ちゃんの反応を注意深く観察することです。
最初に与える人工的な視覚刺激としては、赤ちゃんが好んで見たがる距離のところに、ミルクを飲ませてくれる人の顔を描いた絵を見せるのがよいでしょう。
あおむけ姿勢で目から30センチほどはなれた場所に絵をおきます。
顔の絵は、赤ちゃんはこまかいところまでは見えないので、大まかに描いたものでよく、目・鼻・口とまつげがあれば十分です。
最初は、赤ちゃんの顔の上にあればよいのですが、赤ちゃんが注意して見るようになるときには、右、または左のほうへ動かしてみます。
そして、右、左と注視するようになれば、絵をゆっくりとゆすってやり、赤ちゃんが目で追いかけられるようにします。
絵だけでなく、あおむけになる場所を日に何度か変えて、赤ちゃんの目に入る光景も変えてやります。
変える回数は、赤ちゃんが興味をもって積極的に外の世界を見ているというのが条件ですから、興味深く見るのであれば、ベッドの移動回数を増やしていきます。
急に一日に何度も変えてみたり、変える日と変えない日があったりするのはよくありません。
赤ちゃんを一日に数回うつぶせにすることは、首の筋肉の訓練だけでなく、前に述べたように見るための訓練でもあります。
抱いたり、おぶったりもそのような訓練になるのですから、外の世界が見えるような抱き方、背おい方が大切です。
赤ちゃんの見える世界は、育つにつれてひろがっていくので、与える刺激の距離はだんだんとのびていきます。
最近の脳科学の成果の1つに、「自分の意志で行なう随意運動は、前頭前野からはじまる」ということがあります。
第1期(反射期)の運動は、前頭前野を経由しないで起こっているのですが、反射が運動に変わりはじめる第2期(首すわり期)になると、前頭前野が働くようになります。
反応はすべて、赤ちゃんが自分からする随意運動なので、前頭前野が働いているのです。
第2期(首すわり期)は、前頭前野をきたえる訓練をはじめる時期なのです。
見たり、聞いたりした刺激にすぐに反射を起こしていたのが、徐々に刺激があって、遅れて運動を起こすようになります。
大人が刺激に反応して時間遅れで随意運動をするとき、どのような随意運動をするかは、前頭前野で記憶してからはじめます。
この記憶は運動が終わるまで覚えている記憶で、「ワーキングメモリー(作業記憶)」と呼ばれています。
いろいろな反応ができるようにするには、ワーキングメモリーの能力を高くしなければいけません。
第2期から前頭前野の記憶をよくするのに使わなければならないのが、「いない、いない、ばあ」なのです。
「いない、いない」でお母さんの顔を見ないようにしても、顔が目の前にあるということを覚えていないと、一緒に「ばあ」ということはできないのです。
この記憶は前頭前野に保存されます。
具体的なやり方は、『赤ちゃん教育』の【実践篇】にイラスト満載で掲載されているので、そちらを参考にしてみてくださいね。
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※ 【0歳からの赤ちゃん教育3】すわって、手が使えるように
http://diamond.jp/articles/-/74201 <第3期・腰すわり期――3ヵ月半から5ヵ月半ごろまで>
【記事引用】
すわって、手が使えるようにするには
私たちは0ヵ月からの「赤ちゃん教育」を次の5つの時期に分けて考えています。
【第1期反射期】……誕生から1ヵ月半くらい
【第2期首すわり期】……1ヵ月半から3ヵ月半ごろまで
【第3期腰すわり期】……3ヵ月半から5ヵ月半ごろまで
【第4期つかまり立ち期】……5ヵ月半から8ヵ月ごろまで
【第5期二足歩行期】……歩きはじめるころ以降
首がしっかりしてくると、日中の目覚めの時間が長くなっていき、一日の半分は起きていられるようになります。
起きているとき、赤ちゃんの好奇心は、いっそう高まってきます。たえず目玉を動かして、まわりを見まわして探索し、手でにぎり、さらにこまかく探索します。
背中やお腹の筋肉に力がついて、あおむけからうつぶせへ、うつぶせからあおむけに、自分ひとりで寝がえりがうてるようになります。
赤ちゃんが目覚めているときは、できるだけ相手になってやりましょう。相手になってやらないと、刺激に反応しない、好奇心も示さない、静かで消極的な子どもに育ってしまいます。
「にぎる」と「つまむ」
――つまめると、きれいな字が書ける
手の指を使ってする運動には、基本的には2種類――「にぎる」と「つまむ」があります。
赤ちゃんはもともと「にぎる」ことができるのですが、訓練しないと、きちんと「にぎる」ことはできません。
また、「つまむ」ことはもともとできないので、この時期にしっかり訓練しておかねばなりません。ここで訓練しておくと、字が上手に書けるようになり、工作物をうまくつくれるようになります。
にぎるとグーの姿勢になります。手のひらを4本の指で包み、上から親指をのせます。手のひらにさわって刺激すると、4本の指を曲げる反射が起こります。これが、大脳運動野が反射中枢となる「大脳反射」です。
赤ちゃんが生まれたときの反射は、刺激がなくても勝手に手をにぎっているので、「原始把握反射」と呼ばれています。
目の前にあるボールを自分で「にぎる」ときには、まず、前頭前野の神経細胞が働いて、にぎろうとする意志が発生し、なにをどうにぎるかという“にぎる計画”が「ワーキングメモリー」として前頭前野に保存されます。
そして、運動野の神経細胞が働いて、手の筋肉に「運動指令」を出し、手の指を曲げる筋肉を動かして、にぎる運動が起こります。
手でにぎる運動は、下等なサル(キツネザル、リスザルなど原猿)でもできます。
進化の過程で古い運動野(旧運動野→下図の運動野が旧運動野)が働き、ここから脊髄の神経細胞に連絡が行って、運動細胞が働いて運動が起こります。
目の前にあるリンゴ片を「つまむ」ときには、前頭前野が働いてつまもうとする意志が発生し、なにをどうつまむのかという“つまむ計画”が「ワーキングメモリー」として前頭前野に保存されます。
そして、運動野の細胞が働くのですが、前の旧運動野ではなく、中心溝(→図参照)という溝の壁のところにある、表面には見えないヒトへの進化の過程で新しい運動野(→図では中心溝の後ろの壁にあるため、上からは見えない新運動野)の神経細胞が働きます。
つまむ運動は、高等なサル(オマキザル、ニホンザル、チンパンジー)やヒトしかできません。
にぎる運動は第1期(反射期)からできたのですが、つまむ運動は第3期(腰すわり期)から訓練すれば、できるようになります。
旧運動野が働いて起こる把握運動は「握力把握」、新運動野からの把握運動
は「精密把握」といいます。
私たちが道具(えんぴつ、はさみ、包丁、箸、楽器など)を使うときは、新運動野が働きます。最初は上手に道具が使えるよう、いろいろなものをうまく使って運動の訓練をしなければなりません。やればやるほど、上手になります。
手の訓練
――小さなものがつまめるようにトレーニングする
この時期の赤ちゃんは手でものをにぎることができて、力は前の時期より強くなり、重いもの、大きいものもにぎれるようになっていますが、指でつまむことはまだへたです。
まわりに興味をひくものが見えたら、そのほうへ向かって手をのばします。
まわりで音がしたら、その方向に顔を向けて目で見てから手をのばします。興味のあるものをつかんで、手もとへ寄せて、その性質を調べます。
しかし、手の指を上手に使うことはできません。ひとさし指と親指の2本で小さなものをつまむのも上手にはできないのです。
この時期には、小さなものをつまむことが上手にできるようにすることが大切です。この指の動きの練習ができるおもちゃを与えなくてはなりませんが、よいおもちゃがあまり売っていませんので、いろいろ工夫します。
小さいものは指を使うようにするために必要なのですが、困ったことに口のなかへ入れて探索することもあれば、ときどき飲みこんでしまうこともあります。
小さくて安全なものは、なかなか見つからないでしょうから、小さな品物をおもちゃにし、口ヘ入れても飲みこまないよう教えこむしかありません。つねに監視して遊ばせることになります。
もったおもちゃは落としてもこわれないものがよいですし、赤ちゃんがふったりすると音が出るものがよいのです。
ベッドにいる赤ちゃんが、偶然に腕をのばしたときに、ガラガラヘビのおもちゃにあたって音がしたので、それがあることに気がつきます。
音を出すのがおもしろいので、赤ちゃんはくり返し腕を動かし、音を鳴らすようになります。赤ちゃんの興味をひくのは適当に新しいものでないといけません。
いつも同じものではあきてしまいます。また、まったく新しいものでも、赤ちゃんがそれまでに知っているものと関連づけられないものには興味を示さないものです。
ですから、中程度に新しいものをたえず与えるようにしなくてはいけません。
そうすると、外のものと、赤ちゃんのする行動との関係を理解していくのです。
この時期の手の訓練は、一本一本の指でものがつまめるようにすることと、手でさわって知る世界を豊かにすることです。
右手と左手もかたよることなく使わせることです。
また、おもちゃの大きさも、赤ちゃんが手でにぎって、動かせるぐらいのものでないといけません。
予測することを覚える
――「さきに起こること」を見ぬく脳の発達
動くものを目で追えるようになった赤ちゃんは、将来を予測することもできるようになります。
精神的その日ぐらしの赤ちゃんに、過去―現在―未来という時間のことを知ってもらう最初です。
ためしに赤ちゃんの目の前で、手にもったボールを落としてみます。赤ちゃんはボールの落ちる軌跡を全部追っていかないで、落ちていく落下予定点に目を向けることができます。
こんな赤ちゃんは、ボールの落ち方がわかり、落下点を予測できたのです。
赤ちゃんの顔にかぶせたガーゼをとるガーゼ遊び(→『赤ちゃん教育』164ページ参照)は、予測することを勉強する遊びの一例です。
この条件づけ反応のごほうびは、声をかけたり、やさしいお母さんの顔を見ることや、皮膚をくすぐってもらうことです。
このごほうびをもらうと、赤ちゃんはもっとしてもらいたくなるのです。
静止しているものをにぎれるようになった赤ちゃんには、移動しているものをとらせます。
床の上をころがってくるボールをにぎらせるには、ボールの動いていく軌跡を予測して、つかむ用意をした手をボールの到着予定点へさきにもっていけるように教えます。
さきのことを見ぬくことは、大脳の前頭前野の働きですが、見えてくるものの予測、聞こえてくるものの予測、次にする運動の予測をすることが、将来、脳力を高めるための基礎になります。
うつぶせと2つの姿勢反射
――すわり、立つための条件
腰の筋肉に力がついてこないとすわれるようになりませんが、すわらせて前のめってしまうようでは寝がえりもうてません。
うつぶせにして首を上げ、肘と太ももで、四つんばいの姿勢ができるようにしなければなりません。
第1期(反射期)に吸う反射から吸う反応へ誘導したように、姿勢反射を利用して、うつぶせから四つんばい姿勢にすることを教えます。
うつぶせにして顔を上げると、背中の筋肉や手や足の筋肉が働くようになる反射があります。顔を上げて迷路が刺激されると手や足がのび、背中が弓なりにそります。これが「緊張性の伸張迷路反射」です。
頭を上げて首の筋肉が働くと、首の骨のあいだにある関節の感覚器が刺激されて手はのびますが、足は曲がる反射が起こります。これが「緊張性の屈曲反射」です。この2つが立つために大事な姿勢反射です。
このような反射は、吸う反射とちがって、刺激されると必ず出るほど強いものではありません。ある程度、筋力がついてきたときに、刺激が加わると起こるのです。
ですから、赤ちゃんで姿勢反射を利用するには、手や足の筋肉、とくに肩や腰のまわりについている筋肉(両腕両脚の筋肉)に、赤ちゃんが自分で力を入れないとできません。
腹ばい運動をさせるとき、首に力を入れて顔を上げなければなりません。
うつぶせからあおむけへ、あおむけからうつぶせへ、寝がえりもうてないといけません。背中の筋肉も、強くしないとダメです。姿勢反射が出やすいような姿勢にして、筋肉を使い、力を強くしていって、早くすわれるようにするのです。
具体的なやり方は、『赤ちゃん教育』の【実践篇】にイラスト満載で掲載されているので、そちらを参考にしてみてくださいね。
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※ 【0歳からの赤ちゃん教育4】一日も早く、はいまわれるように
http://diamond.jp/articles/-/74210 <第4期・つかまり立ち期――5ヵ月半から8ヵ月ごろまで>
【記事引用】
一日も早く、はいまわれるようにするには
――動きを止める学習
【第1期反射期】……誕生から1ヵ月半くらい
【第2期首すわり期】……1ヵ月半から3ヵ月半ごろまで
【第3期腰すわり期】……3ヵ月半から5ヵ月半ごろまで
【第4期つかまり立ち期】……5ヵ月半から8ヵ月ごろまで
【第5期二足歩行期】……歩きはじめるころ以降
第4期(つかまり立ち期、5ヵ月半から8ヵ月ごろまで)の赤ちゃんは、まだ自分の身体を移動することができません。
しかし、身体のまわりにあるものを自分のほうへ運ぶことはできます。まわりにあるものを見つけ、手にとることはできるのです。
腕と脚をさかんに動かすようになって、やがてうつぶせからあおむけの姿勢に、またあおむけからうつぶせの姿勢に、身体の位置を変えることを覚える時期です。
この時期の目標は、「ハイハイ」ができて、地上を四足で移動できるように一日も早くすることです。
実際、この時期の赤ちゃんは、お母さんが手をかさなくても、自分で手を使い寝がえりをうつうちに、「ハイハイ」ができ、はっていくようになりますが、それだけでは脳を十分働かせたことにはなりません。赤ちゃんが一日でも早く、はいまわれるよう、お母さんが助けるのです。
自分ではいまわれるようになると、危険が増えてきます。ここでは、2つの新しいことができなければなりません。
つまり、お母さんが「ダメ」といったら動きを止めることと、自分で動きを止めることを学習しなければならないのです。
してもらっては困ることを赤ちゃんがしようとしたら、「ダメ」と大声でいい、すべての運動をストップさせます。ストップしたらほめて、C線維カレス系システム(→くわしくは『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』をご参照ください)を働かせて気持ちよくなってもらいます。
こうして、禁止命令語を学習させましょう。
すべての運動や行動は前頭前野が働いてはじまるのですが、運動や行動をストップする指令でも前頭前野が働いています。
第4期(つかまり立ち期)には、このことを学習しなければなりません。なにかを見たり聞いたりしたら、動きを止めることを学習しなければならないのです。
それが教育、訓練、赤ちゃんから見れば、学習、勉強なのです。
人見知り
――母子の愛情関係、理屈をこえた関係ができる
この時期のはじめのころの赤ちゃんはたいてい上機嫌ですが、だんだん相手を区別するようになり、「人見知り」がはじまります。
自分をかわいがってくれる人とそうでない人を区別し、かわいがってくれる人が相手になるとほほえむのに、そうでない人、他人にはほほえまないばかりか、不愉快な感情をあらわします。
この行動は、自分を育ててくれる人に対して固着する行動で、母と子のきずなをつくるのに大事な行動ですから、早く覚えてくれることがのぞましいのです。
赤ちゃんは自分を守ってくれる人のうちのひとり、お母さんにとくになつき、お母さんにとくによく笑うようになります。
お母さんもとくにかわいいという愛情をもつようになりますが、人見知りをはじめる時期でもあります。
この母子関係ができあがると、母子の愛情関係が確固なものとなり、一生つづき、忘れることのできないものになります。戦場で死にのぞんだ若者が「お母さん」といって息をひきとっていく話など、親と子の関係は、理屈をこえた関係なのです。
この関係の成立は、言葉の発生に非常に重要です。赤ちゃんは他人を区別し、それを言葉で理解するようになっていくからです。
小さいものをいじって遊ぶ時期
――手の動きが確実になる
まだ、自由に動きまわれない赤ちゃんのすることは、目で見て、音で聞いて、目を向けたものを手にとってさわって、そのものの性質を理解することです。
この動作は第3期(腰すわり期)にはじまったものですが、手ではもっと小さいものがいじれるようになる(0.5センチのものでも可能)ので、赤ちゃんの外界の理解はいっそう深く複雑なものになっていきます。
上腕も使えるようになり、手の動きは確実なものになっていきます。手でいじくったり、落っことしたり、投げたり、手をもちかえたりして、そのもののもつ効果を知り、そのものの性質をいっそうよく理解していきます。
大きな筋肉を動かせることや、腕や脚を動かすこともはじめます。
この時期に、動かすことが心地よいものだと思わせることが、積極的に身体を動かすことを好む子どもに育っていく鍵です。
そのためには、脚や腕を動かしたら、ほめてやることです。そして、くり返し、脚や腕の運動をするようにしむけることです。ほめられると、気持ちよくなってうれしいから、もっとくり返して動かすことになるのです。ほめることが報酬なのです。
赤ちゃんが新しく覚えた運動のパターンをくり返すことを楽しむようにしむけましょう。
知能――おもちゃの上にハンカチをかぶせてみる
この時期には、問題解決のために頭を使うという知能の働きはまだありません。
たとえば、赤ちゃんにおもちゃを見せて、その上にハンカチを1枚かぶせてみます。
下のおもちゃの形がハンカチを通してわかると、赤ちゃんはハンカチをどけておもちゃをとろうとします。おもちゃが見えているからです。
今度はハンカチを2枚かぶせて、下のおもちゃの形がわからないようにすると、赤ちゃんはもうハンカチをとりあげません。
この時期の赤ちゃんにとって、見えないものは存在しないものなのです。
また、おもちゃの一部分だけをハンカチでおおったとき、赤ちゃんはハンカチを手でとりのけて、おもちゃをつかみます。見たものが見えなくなっても、それがなにかがわかっているのは、視覚印象が脳のなかにはっきりできる第5期(二足歩行期、歩きはじめるころ以降)になってからです。
ワーキングメモリーの発達は、まだまだ弱いのです。
かわいがられていると感じさせる
――短期記憶をつける法
この時期でも、赤ちゃんがかわいがられていると感じさせることは大切です。
「いない、いない、ばあ」といった遊びは、なにかを期待すること、短期記憶をつけることにも有効に働きます。
この時期のおもちゃは、手でにぎれる5〜12センチ程度のもので、鏡(徐々に興味を示さなくなるが)、ぬいぐるみ、ボールなどいろいろな大きさのものが好ましいものとしてあげられます。いくつかのものを重ねあわせたり(3段重ねのコップ)、お互いにくっつきあう積木なども、よいおもちゃといえます。
赤ちゃん用の補助椅子は、この時期の終わりごろには不可欠です。
お母さんが用事をしているときに、そばにおくのには好都合。この時期になると、動きまわる赤ちゃんを、ダンボール箱のなかに入れておくことはできません。
しかし、長いこと椅子にすわらせてイライラさせるのもよくないのです。
具体的なやり方は、『赤ちゃん教育』の【実践篇】にイラスト満載で掲載されているので、そちらを参考にしてみてくださいね。
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※【0歳からの赤ちゃん教育5】歩きはじめると、真の知能が芽ばえる
<第5期・二足歩行期――歩きはじめるころ以降>
http://diamond.jp/articles/-/74213【記事引用】
歩きはじめると、真の知能が芽ばえてくる
――歩くことが大切
私たちは0ヵ月からの「赤ちゃん教育」を次の5つの時期に分けて考えています。
【第1期反射期】……誕生から1ヵ月半くらい
【第2期首すわり期】……1ヵ月半から3ヵ月半ごろまで
【第3期腰すわり期】……3ヵ月半から5ヵ月半ごろまで
【第4期つかまり立ち期】……5ヵ月半から8ヵ月ごろまで
【第5期二足歩行期】……歩きはじめるころ以降
歩けるようになったら、毎日歩いて、脳を発達させなければいけません。
たとえば、公園まで歩いていくとします。すると、脳の前頭前野で歩こうという意志が発生して、どのように歩いていくか、「ワーキングメモリー(作業記憶)」として保存し、運動野が「歩けという命令」を出して歩きだします。
すると、脳の奥のほうにある、歩くと必ず働く、嗅内皮質の格子細胞が活性化し、長期記憶を司る海馬が働くようになります。
そうなれば、子どもの脳が発達し、記憶力がぐんぐん高まります。だからこそ、歩くことが大切なのです。
私たちが歩行すると、このように移動を助けるナビゲーションシステム(嗅内皮質海馬記憶系)が働いて、行動を助けます。
このナビゲーションシステムの働きを明らかにするのに貢献した、J・オキーフ、M・モーセル(妻)とE・モーセル(夫)が2014年のノーベル医学・生理学賞を受けました。
オキーフが1971年に、場所細胞を見つけ、モーセル夫妻が2005年に格子細胞を見つけ、脳内GPS(衛星利用測位システム)を解明したのです。
歩きだした赤ちゃんの脳の働きを高めるために容易にできて、効果のあるのが歩くことなのです。
赤ちゃんが歩かないで脳の発達を期待しても、それはできません。歩けるようになったら、毎日できるだけ歩かせましょう。
とうとう、感覚運動的知能の時期の最後の段階にきました。
この第5期(二足歩行期、歩きはじめるころ以降)の赤ちゃんの特徴は、つかまり立ちをし、ひとりで歩き、走ることです。ですから、感覚運動的知能が、3次元の世界にひろがります。
いままではジッとすわって感覚刺激に反応していたのが、床上を移動し、また高いところへはいあがってものにふれ、反応するようになります。
自分で目標を決めて手足を動かすので、みずから積極的に行動をすることになります。自分の目標に近づくための方法を、自分で見つけるようになります。
知能も感覚運動的なものだけでなく、真の知能と呼べるものの芽が出てきます。
赤ちゃんの外の世界への好奇心は、いままで以上に高まってきます。
いままでは自分では動けないので、遠くからながめていたものにも、自分で近づいていって、手にとり、さわり、働きを調べます。
この時期には、まったく新しいものにも興味を示し、探索をはじめます。
いままでに知っていたものとくらべて、関連があって少し新しいものに興味を示していたこれまでの時期とは、たいへんちがってくるのです。
赤ちゃんは新しいものを見て、さわり、働きを調べ、失敗したり成功したりしながら、自分とは別にある世界の性質を理解していくのです。
お母さんの覚悟
――他人と一緒にすごすのが楽しい子に
3次元的にひろがっている赤ちゃんの行動に立ち向かうお母さんの役割は、いままでよりもはるかにむずかしく、大切になってきます。
これまでの育児では、脳の発達にともなってできるようになる反応をひきだしてやればよかったのです。その上手、へたで、赤ちゃんの反応が速かったり、遅かったりして、行動発達の個人差があったのでした。
この時期では将来、とりかえしがつかないほどの変化が脳のなかに起こっています。
(1)他人と一緒にすごすのが楽しい子ども
(2)他人と一緒にすごしにくい子ども
(3)他人とすごすよろこびを知らない子ども
と、赤ちゃんがどれかのタイプの子どもになることがはっきり決まってしまいます。
この本での目標はもちろん、(1)のタイプの子どもに育てることですが、母親がそのつもりでいても、この時期のちょっとした育児のやり方で、(3)のタイプの子どもに育ってしまうこともあります。
(3)タイプの子どもを(1)のタイプに変えることは、理論的に不可能であるということが実証されているわけではありませんが、2歳以後になると、非常にむずかしく、長時間かかってやっと(2)のタイプぐらいになる程度です。
この時期の育児には、いくつかの落とし穴があります。一度失敗すると、この穴からなかなかはいあがれないのです。
赤ちゃんが家のなかや外で歩きまわるので、身体に対する危険がいっぱいです。端の角にあたって外傷を起こす机、手にもって傷つく刃もの類、落ちたら危険な水辺など、たくさんあります。
好奇心旺盛な赤ちゃんですから、どこにでもでかけ、さわり、調べてみます。
思いがけない事故を起こさないよう、一切の危険物を赤ちゃんの手や足や口にふれないようにします。赤ちゃんが行っては危険な場所(たとえば浴室など)には入れないようにします。
家のなかでは、赤ちゃんを自由に動きまわれるようにしましょう。でも、ひとりでは家の外へは出さないようにしむけましょう。
このころの赤ちゃんは階段をのぼるのが好きですが、ひとりでおりることができないので、おりるときにころんで頭をうってはたいへんです。
階段のぼりは監視しながらさせましょう。十分監督できないのなら、階段は「立入禁止区域」として柵をおいてのぼれないようにします。
赤ちゃんが立入禁止区域に入ろうとしたら、すぐに「ダメ」と大声でどなります。それでもやめないで入ろうとしたら、抱き上げて「ダメ」と大声でいうと同時に、お尻をたたきます。禁止すべき行動をしたとき痛みを与えるのです。
ただ、少し時間がたつと、自分のしたことを忘れているので、痛みをなんのために受けたかわからなくなります。
同じことを3回以上くり返さないようにすることです。「3度目の正直」という格言を思い出して、教えこんでください。
うまく教えるには、お母さんが絶対の権威者であることを赤ちゃんに理解させなければいけません。立入禁止区域に入ってもなにもいわれなかったり、「ダメ」といわれるだけだったり、たまにお尻をたたかれたりと、お母さんのすることが気まぐれでは、赤ちゃんは状況を見て、お母さんのいないときには立入禁止区域に侵入する知恵をもつようになるでしょう。
お母さんは自由に動く赤ちゃんをたえず監視して、禁止したことをすればすかさず行動しなくてはいけません。そのための体力も必要です。
数と脳――数の概念を教える
第5期(二足歩行期)になると、数の概念を教え、算用数字(0、1、……、9)を見て読めるようにして、1ケタの足し算と引き算を暗算でできるようにしましょう。『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』の【実践篇】のようにするとやりやすいでしょう。
数(ナンバー)は数字をあらわし、特定のものについて数え、それには単位があります。リンゴは1個、2個。車は1台、2台。時間は1秒、2秒。これが数の3要素で「種類(リンゴ)、数(1、2……)、単位(個)」、これを数の概念といいます。
赤ちゃんに、おもちゃの車を3台見せ、「車が何台?」と聞いて、「車が3台」と口で答えてもらいます。
次に、車をすべてとりあげて見えなくして、「車が何台?」と聞きます。「車がゼロ台」という意味を理解して、答えるのはむずかしいことです。ただ、「ゼロの概念」をマスターすることは、数学的なセンスを身につけるうえで非常に大切です。ぜひとも、答えてもらうように働きかけましょう。
「4、3、2、1」など、数を逆からいえるようになったら、お風呂のなかで一緒に数をいい、「4、3、2、1、0」でお風呂から出るようにします。
これを数回くり返すと、時間が「ゼロ秒」になると、お風呂からあがることが自然と理解できるので、徐々に「ゼロの概念」ができてきます。
「0、……、9」の概念ができたら、次は足し算です。
1+1=2(「イチたすイチはニ」)、1+2=3(「イチたすニはサン」)……。
数字を見せ、口で唱えて答えをいわせ、覚えてもらいます。
赤ちゃんはワーキングメモリーで覚えますが、すぐに忘れますから、答えが正しくいえるようになるまで何度もくり返します。
答えをまちがえず、早くいえるようになると、海馬が働いて下頭頂小葉(かとうちょうしょうよう)に保存されるようになります。
最近、暗算と脳の関係が研究され、暗算は数で考えることで、暗算中に前頭前野が働いていることがわかりました。子どもは答えをワーキングメモリーとして前頭前野に保存し、大人は海馬を使って、下頭頂小葉に保存していることが2013年に報告されました。
大人の暗算は速くてまちがわないのですが、子どもは遅くてまちがうだけでなく、数を数えたり、計算するときに身体を動かしています(これを「カウンティング」といいます)。
暗算では、考えて答えを出しているのではなく、記憶して答えを出しています。
ですから、くり返し、答えを唱えていれば覚えやすいのです。
じつは、子どもは大人より記憶能力が高いのです。これは、子どもの徐波睡眠(→『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』をご参照ください)の期間が大人より長いからだという睡眠学説が有力です。
赤ちゃんにくり返し暗算をいわせると、答えをかんたんに覚えてくれます。
小学2年生で算数のできる子とできない子を集めて、暗算の個人教授をした実験が最近アメリカで行なわれました。
個人教授をすると、どの子どもも暗算能力が上がりました。そこで、暗算能力の差がなぜ生じたかが調べられたのですが、子どものIQ(知能指数)や前頭前野のよさはちがいがなく、ちがっていたのは、実験の前にどれくらい暗算の回数をしていたかだったのです。
暗算のできない子どもは、それまで暗算をしていなかったか、ただたんに回数が少なかっただけなのです。
答えを教えてやってやれば、だれでもできるようになったということでした。
赤ちゃんが0〜9の足し算と引き算ができると、小学1年生修了時の算数の能力をもっていることになります。
この赤ちゃんたちが小学校へ入学すると、どんなことが起こるか予想できません。
足し算と引き算のあとに、掛け算の九九の答えをワーキングメモリーに覚えていけば、小学2年生修了時の学力をもつことになります。
これは、脳科学の成果を利用すれば、教育の効率を高めることができる一例です。
暗算の記憶をさせれば、子どもの能力が高まり、学業成績だけでなく、対人関係能力もアップします。ぜひ暗算をさせてください。
クボタメソッドで「赤ちゃん教育」を少なくとも1年以上受けた赤ちゃんが、小学校入学以前に、小学2年生修了時の算数の実力をつけることはむずかしくありません。
数の暗算を小学校へ行く前に教えましょう。
具体的なやり方は、『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』の【実践篇】にイラスト満載で掲載されているので、参考にしてみてくださいね。
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● ベストセラー“0歳からの伝説の育児バイブル” がついに復刻!!
このたび、1983年の発売で長らく絶版となっていた、『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』を出版しました。
刊行に際し、190点近いイラストと本文を完全リニューアルし、最新の脳科学データを満載にしました。
1983年発行書籍は、一時期、アマゾンマーケットプレイスで1万56円の高値がつきました。国会図書館からの貸出も多くて本がバラバラになり、貸出ができなくなった、“0歳からの伝説の育児バイブル”です。
2009年に『中居正広の金曜日のスマたちへ<金スマ>』(TBSテレビ系)や『エチカの鏡』(当時、フジテレビ系)などで“脳科学おばあちゃん”と紹介された妻の久保田カヨ子と一緒に実践してきたクボタメソッドの原点はすべて『赤ちゃん教育』にあります。
2人の息子も東大&一級建築士に合格。この20年で3000人超の赤ちゃんと接してきた我々の知見と経験をすべて書籍にとじこめました。一読いただければ、サブタイトルの「頭のいい子は歩くまでに決まる」の意味もおわかりいただけるかと思います。
“クボタメソッド”が長年有効とされている秘密は、最新の脳科学データに基づき、前頭前野を鍛え、ワーキングメモリーの能力を高め、海馬を使う記憶の能力を高めるからです。
よろしければ、ぜひ一度、お読みいただけると幸いです。
<著者プロフィール>
久保田 競(Kisou Kubota)
1932年生まれ。医学博士、京都大学名誉教授。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。『ランニングと脳』『天才脳をつくる0歳教育』『天才脳を育てる
1歳教育』『天才脳を伸ばす2歳教育』『赤ちゃんの脳を育む本』『あなたの脳が9割変わる! 超「朝活」法』など著書多数。
久保田カヨ子(Kayoko Kubota)
1932年、大阪生まれ。脳科学の権威である京都大学名誉教授・久保田競氏の妻で2人の息子の母。長男が一級建築士、次男が東京大学に合格。約30年前に、日本における伝統的な母子相伝の育児法を見直しながら、自身がアメリカ在住時と日本で実践してきた出産・育児経験をもとに、夫・競氏の脳科学理論に裏づけされた“0歳から働きかける”クボタメソッドを確立。テレビなどで「脳科学おばあちゃん」として有名。『カヨ子ばあちゃん73の言葉』『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』『カヨ子ばあちゃんのうちの子さえ賢ければいいんです。』など著書多数。ズバッとした物言いのなかに、温かく頼りがいのあるアド
バイスが好評。全国からの講演依頼もあとをたたない。
【脳研工房HP】
http://umanma.co.jp/久保田競/久保田カヨ子
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※ 「赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる」の全記事一覧:
http://diamond.jp/category/s-akachankyoiku (*^‥^*)」 イヨッ